体液とはpH7.4の緩衝液とすれば、タンパク質に組み込まれた酸性アミノ酸側鎖やタンパク質のC末はその酸性度から大部分が共役塩基:カルボキシラート(CO2)として存在する。塩基性アミノ酸側鎖では強い塩基性のリシン・アルギニンでは大部分が共役酸(プロトンと結合した陽イオン)として存在する。

これは酸・塩基性基が体液と相互作用するタンパク質の表面部分の話だ。タンパク質の塊の中で化学反応の触媒となる部分は別世界だ。そうでなければタンパク質が立体構造をつくる意味がない。くどいが、強酸・強塩基の相互作用は弱酸・弱塩基の相互作用より強力は、立体構造のタンパク質の表面・塊の中双方で通じる概念だ。

pH7.4の緩衝液中での酸・塩基の挙動は図-2のようになる。カルボン酸程度の酸はほぼ全部が陰イオンになるがフェノール程度では大部分はイオン化せずにそのままで存在する。塩基も同様に強塩基はイオン化、弱塩基は大部分イオン化しない。そしてイオン化すれば酸は塩基(共役塩基)に塩基は酸(共役酸)に変身(図―1)する。弱酸の共役塩基は相対的強塩基に、弱塩基の共役酸は相対的強酸になる。換言すれば、対象となる環境で存在確率の低いものほど酸・塩基性度は高くなり、活性度が高くなる。これは「平衡関係にある左右の物質のポテンシャル総量は同等」 と考えると分かりやすいが・・・つまり、対象となる環境で存在し難い物質はポテンシャルが高いのだ。

タンパク質の触媒作用部分ではpH7.4緩衝液中では存在し得ないセリン側鎖の水酸基の水素を種々の作用を絡めて引き抜く(-CH2OH→CH2O)ことができる。立体構造の組み立て方で多数の化学反応を行うことができるタンパク質の素晴らしさの一例だ。