ここまで記したことは一酸化窒素誘導体に注目し他の化合物との相対比較を断った見方である。視野を広げると次のようにも言える。N,Oは共に電気陰性度の大きな原子だ。電気陰性度の大きな原子間の二重結合が実現したのが一酸化窒素だ。N,O共に電気陰性度の値の小さな原子と「結合をやり直す」ことで大きな安定化が実現する。このことがN,O直結構造を含む分子の分解反応・転移反応、酸化力・爆発力の源となっている。

 ニトロソアルカンの黒線で囲った五原子に着目し、私の捉え方を具体的に紹介する。ニトロソアルカンはα位に水素があれば転位反応が起こってオキシムになる。オキシムはベックマン転位で最終的にはアミドに変換できる。アミドは原子の組み合わせにエネルギー的な無駄が無いので転位反応は起こらない。結合エネルギーの大きな二重結合に着目すると、N=O, C=N, C=OではC=Oが最大である。下図、ニトロソ・オキシム・イミド酸では原子の組み合わせ方・結合法に無駄があるのだ。

 同じ理由で起こるのが人体での糖の嫌気的代謝・嫌気性微生物のエネルギー獲得法だ。原子の組み合わせ方・結合法を変えるだけでエネルギーを獲得する方法である。