本項と前項()の共通点は、ラジカルホモカップリング反応が起こりにくい点だ。何故か? 一言で言えば、不対電子が安定で、ラジカルホモカップリング生成物が不安定だから。しかし二酸化窒素は不対電子が混成軌道に在って安定とは言えない。だがカップリング体も窒素原子の陽電荷量が大きいので陽・陽の反発(―5参照)で不安定なのだ。従ってラジカルの活性度の視点からは二酸化窒素が最高となる。

 前項()のラジカル安定化作用で一酸化窒素・二酸化窒素を評価すると、双方窒素原子側に不対電子が在るので「酸」としては弱酸、孤立電子対は双方酸素側だから弱塩基だ。従って隣接原子軌道間の酸・塩基相互作用による安定化力は小さい。一酸化窒素はで記したが酸素分子と同じ境遇に在る。従って二重結合に携わらない電子の収め方で構造が決まる。二酸化窒素では配位結合効果(―5参照)で構造が決まる。

 次は誘導体の話だ。一酸化窒が誘導体になれば不対電子(酸)が共有電子対(塩基)に変わる。従ってできる限り電気陰性度の値が大きい軌道に共有電子対を収めれば安定化につながる。この見地からp軌道のままでの置換基との結合は不利となり、sp2混成軌道で置換基との結合となる。二酸化窒素の不対電子はsp2混成軌道に在るのでそのままでの結合だ。二酸化窒素では窒素原子が電子対を供与する配位結合を酸素原子と実現している。従って窒素原子の陽電荷量は大きくこの窒素原子と直結する原子の陽電荷量が重要な安定化要因となる。詳細は二酸化窒素誘導体(-6)を読んでください。