本安定化作用を緩やかに表現すれば、「隣接原子の電子対による空軌道・不対電子安定化作用」となる。突然空軌道が出現したが、後述の安定化が実現する理由での原子軌道の「酸・塩基」の見地から不対電子と空軌道が共に「酸」であることによる。
この緩めた表現に当てはまる「酸素分子の兄弟達」は、611 がある。6 は超安定なニトロキシドラジカル、7 はテトラシアノエチレンラジカルアニオン、8 は(アリル・アリール)メチルラジカル、9 は超共役による安定化、10 は三中心二電子結合のジボラン、11 は配位 π結合が実現した一酸化炭素である。5‘7 はp軌道上の不対電子が隣接原子のp軌道の孤立電子対で、89 は共有電子対で、10 は異なる原子団間で空のp軌道を互いの共有電子対で、11 は空軌道が隣接原子の孤立電子対で安定化(配位 π結合)される。 

 要は、これら7 種原子団で安定化が実現する理由である。私は「酸・塩基相互作用」として説明する。ルイスの酸・塩基の定義では、酸:電子対受容体、塩基:電子対供与体である。このルイスの酸・塩基の概念を原子軌道に適用する。酸とは、空と不対電子の軌道空間に在る。塩基とは、各種軌道上の孤立・共有電子対である。安定化の力量は酸・塩基の強度 ( 次頁:④参照 ) で決まる。強酸と強塩基なら大きな安定化を、弱酸と弱塩基では安定化力は小さい。
 上図の青塗り矢印の幅の広さで安定化力の規模を私の主観で表している。共有電子対による安定化( 8, 9, 10 )では安定化に比例して共有結合エネルギーが減少すると捉える。従って本安定化作用による原子団全体の安定化力はそれ程大きくない。そして 89 となる。理由は次項にあるが、C-Cのπ結合電子対とC-Hσ結合電子対の電気陰性度( 後述:8 )の差である。
 一酸化炭素(11)の配位π結合は本安定化作用の究極状態にあと一歩まで近付いている。酸素分子を中心にすれば、一酸化炭素は「いとこ」相当だ。配位結合を中心にすれば、5‘10 は不完全配位結合原子団群である。配位結合に関しては次項 ( :私が見た一酸化窒素・二酸化窒素とその誘導体 )で詳述の予定。