1960年私は工業高等学校の工業化学科で学び始めた。ここで学んだ化学反応は化学反応式を暗記するしか術が無かった。私は暗記が苦手故なのか不満感があったが、不満の原因はこの時点では未だわからない。
高校二年の時書店で、井本稔著 有機電子論解説* と出会った。電子論? 数日立ち読みして前記不満の原因がわかった気がした。
これまでに習った化学反応式では、何故この反応が起こるのか? の疑問に全く答えられない。しかしこの本では種々の概念を駆使して化学反応の推定反応機構が記されている。これで化学反応を理解し納得することができるのでは? これこそ私が求めていたものだ。
誰でもと思うが私は「納得」しなければ能動的になれない。納得すれば納得事項を踏み台に周辺知識・情報をからめて推定作業をする気になれる。この本は私が物質や化学反応を納得することに大いに貢献してくれた。
この本を入手した私は、自分流の推定反応機構を考えることで化学反応を納得することが可能となり、有機化学が得意科目になった。
私は民間企業の研究所に職場を得て化学部門に配属された。配属先を一言で言えば、有機化学を使って会社に貢献する職場、がピッタリの「有機化学漬け」職場なのだ。私は定年後のグループ会社勤務を含めて44年間有機化学漬けだった。
*井本稔著 有機電子論解説上・下(東京化学同人)
