一酸化炭素・ベンゾキノン・テトラシアノエチレン・芳香環直結カルボニルの電子親和力に関して私流把握法を披露した。先ず本項の話をまとめる。
オクテット則を満たした中性物質の一電子受容ではラジカルアニオンが生成する。本物質の電子親和力の値がプラスならラジカルアニオンの方が出発物質より安定となる。本項で紹介した一酸化炭素・ベンゾキノン・芳香環直結カルボニルは全てプラスの値である。本項の冒頭で述べたπ結合を解消することで一電子受容すれば、混成状態を変えずC原子がアニオンとなりO原子がラジカルとなることで大きな安定化が実現する。
この安定化は私が主張する「隣接原子の平行するp軌道間酸・塩基相互作用」である。本安定化作用は電子対(塩基)を収容した軌道の電気陰性度が低いほど強塩基となる。ラジカル(酸)を収容した軌道の電気陰性度は高いほど強酸となる。強酸と強塩基の相互作用は大きな安定化が実現する。「超」安定ラジカルと言われるニトロキシドラジカル化合物群(Ⅰ-6)では塩基が中性N原子の孤立電子対で酸がOラジカルだ。本項での塩基はカルボアニオンの孤立電子対である。Cが中性でもNに比べれば電気陰性度が低い。ペンタカルボニル鉄でもCは電気陰性度の低い金属(鉄)と結合している。本項で取り上げたラジカルアニオンでは「超」3(超の3乗)安定ラジカルと言わねばならない。それ故に例えばペンタカルボニル鉄では16(図-9)のごとき化学構造式が与えられている場合が多い(一例:Wikipedia)。この構造式で多くの人たちが納得している? 仮に納得しているとすれば、その理由はペンタカルボニル鉄がラジカルの挙動を示さないからなのか? 「超」3安定なラジカルはラジカル特有の挙動が無い? 私はペンタカルボニル鉄の性質に関しては知見が無いのでラジカルか否かの言及はできない。 しかし化学構造式としての16は酸素原子が3価であるにもかかわらずプラスの形式電荷が付いてない。プラスの形式電荷をつければ5個のマイナス符号を付けるところが無い。この事態は酸素分子と似た状況と言える。これを解決する一法がここまで繰り返し述べてきたラジカル安定化の新概念:隣接原子の平行するp軌道間酸・塩基相互作用である

この概念によるペンタカルボニル鉄の化学構造式が10である。10のFeとCOの結合達成機構を表したのが13である。先ずFeから一電子がCOのC原子に移動(○で囲った半矢印)する。これでC,O両原子はsp混成状態を維持したまま平行するp軌間の酸(O:ラジカル)・塩基(C:電子対)相互作用による「超」3安定化が実現する。Cはカルボアニオンに変化したのでsp混成軌道の実質電気陰性度は低下する。電気陰性度が低下すればsp混成軌道に在る電子対の配位結合能は高くなる。それでFe+との間でCから電子対を供給した配位結合(CからFeに向かう矢印)が成立する、とする。以上の全てを表したのが13のFeとCの間の略号である。
これでCは中性状態になったが結合相手がFeゆえに結合電子対がCに偏ることでCの実質的電気陰性度が減少する。ゆえにラジカルの安定度は増し「超」の二乗~三乗の間にあると捉える。ここまで安定化されたラジカルはラジカル特有の性質を示さない可能性があるのではないか?・・・前述したが、私はペンタカルボニル鉄に関する知見が無いのでこれ以上の言及はできない。
