鉄ペンタカルボニル{Fe(CO)5:10}は鉄の微粉末に一酸化炭素を反応させることで合成できる。この反応機構を私の主観で表すと図-3となる。

図-3を説明する。一酸化炭素(1)は電子親和力がプラスだから一電子受容で安定化する。従って金属状態の鉄に接近すれば鉄から自由電子一つを奪うことが可能だろう。奪えばCOのC原子はカルボアニオンに変化し、隣接原子の原子軌道間酸・塩基相互作用力の最大化が実現し安定化(図-2)する。同時にカルボアニオンのsp軌道に収容している孤立電子対の実質電気陰性度が低くなることにより配位結合能力が増す。従って同時に遊離したFe+との間に配位σ結合が実現(11)する。配位結合が実現すればカルボアニオン状態が消失し、中性のC原子となるので隣接原子の原子軌道間酸・塩基相互作用の安定化力は幾分か減少する。「幾分」の理由は、Cの結合相手が電気陰性度の値が小さいFe故に共有電子対がC側に偏りCの実質電気陰性度の値が小さくなるから。

鉄ペンタカルボニルの私流化学構造式を説明(図-3 黄塗り部分)する。12はCの電子対供給によるFeとの「配位結合」を表している。しかし、Cの配位結合能が高くなった原因は先に金属状態の鉄からの一電子移動が実現(反応式一段階)したからだ。反応段階の全てを合算したのが13である。円(○)で囲った半矢印は「先に」一電子移動が左側原子から右原子に実現したことを表す。左向き矢印は配位結合を表している。電子の移動を合算すれば配位結合()では無く通常の共有結合(10/図-3)とも言える。FeとCの結合をはじめから通常の共有電子対()だけで表すとFeとCの結合の理解に苦しむだろう。

Oの不対電子が元素記号の上に在るのはp軌道に在る(-5参照)ことをあらわしている。故にO原子の混成状態がspをも表している。またC原子側からの太い短線はO原子のp軌道と平行するC原子のp軌道上の電子対による安定化を表している。従ってC原子の混成状態もsp混成を表している。二重結合が成立した状態でp軌道が在るのはsp混成しかない。